YouTube、プレゼン、広報、余興のために動画を作っているけれども、声がいまひとつ聞こえ辛い…そういったお問い合わせを頂くことが増えてきました。せっかく動画を作るのですから、声もしっかりと捉えたいですよね。
本特集では、主に"話し声"の収録方法を中心にハードウェアのご紹介をさせて頂きます。編集ソフトでボリュームを上げる方法もありますが、ソフト上で音量を稼ぐのは声と一緒にノイズも上がってしまうのであまりお勧め致しません。
ノイズの少ない音声を得るためには、できるかぎり音源とマイクの距離を近づけて頂き、適正なマイクを適正にセッティングして頂くことが重要です。ここでは主に、ハードウェアを中心に音声品質アップのご提案をさせて頂きます。
方法は様々あり、それぞれ一長一短ございますので、ご用途に合ったハードをお選び頂ければ幸いです。
iPhone、ビデオカメラどちらのデバイスでも応用が利く方法です。レコーダーで音声を収録、編集ソフトを使って後から動画と音声を同期させる方法です。
別録り用のレコーダーとしては、声の収録に特化したピンマイク用レコーダーや、汎用性の高いステレオマイク内蔵のレコーダー(リニアPCMレコーダー)、そしてカメラに最適なフィールドレコーダーがあります。
フィールドレコーダーと呼ばれるレコーダーの多くは、複数のマイクを接続することができ、ショルダーストラップを付けることで、レコーダーを肩掛けすることができます。中にはカメラと結合できるように、レコーダーにカメラネジ(オス)を装備する製品もございます。
音声別録りの場合、ビデオファイルとオーディオファイルが別々になります。
音声別録りの最大のメリットは、ファイルが分かれるため、どちらか一方の音声に問題があったとしても、差し替えができるという点です。
カメラで音声収録をして音声トラブルなんてそうそう無い、と言いたいところですが意外と起こり得る問題です。カメラ内蔵マイクを使用する場合は、ゲイン不足(音が小さい)、外付けマイクを使用する場合は、接触不良・断線・電磁波による音声不良、そして突発的な物理衝撃や風による音声不良も起こり得ます。
また、多くのレコーダーは音声確認用のモニター端子・ヘッドフォン出力を搭載しているため、レコーダーのモニター出力経由で収録中に音声トラブルが生じて居ないか聴覚で確認をすることもできます。
撮り直しができない撮影は、できる限りバックアップとして別録りをなされることをお勧め致します。 別録りで収録を行い、カメラ内蔵のマイクで良質な音声が収録できていれば別録りファイルは使用しないこともあります。
音声別録りのデメリットはビデオファイルとオーディオファイルが別々になるため、ファイル整理の手間が増えるという点、動画編集ソフトによる同期作業が必要になる点がございます。
業務用カメラでしたら、カメラとレコーダーでタイムコードの同期を行うことで、確実に同期ができますが、流通する一般向けビデオカメラの多くはタイムコードの入力・出力という概念がございません
タイムコードを共有していないファイルの音声の同期については、収録時の頭にカチンコの音や手を叩く音を入れることで、同期は格段にしやすくなり、波形に基づく自動同期が可能なため、コツを掴めばそれほど苦ではないのですが、ファイル整理は悩ましい問題です。
シーンが複数ある収録では、どのビデオファイルとどのオーディオファイルが対をなすのか把握・管理するのが少し大変です。
シーンが多くあるいはカットが細切れとなっており、なおかつ予算や時間を掛けられないシチュエーションですと、やや不向きな手法かと存じます。
長回し・ワンカットでの収録には最適。コツさえ掴めば時間もそれほど費やさず、なおかつ音声不良リスクの低い制作が可能かと存じます。
レコーダーとピンマイクのセット。声の収録に特化したレコーダーです。とにかくコンパクトで気軽に使用できます。ピンマイクは身に付けて使用するマイクのため、カメラとの距離に関係無く安定した音量が得られます。対談や説明動画等、声の収録をする際は、とりあえず人数分付けておきたい製品。ステレオマイクだけで収録したときと比較すると声の芯がハッキリと聞こえ全然違います。ビデオカメラへのお供的なレコーダーです。一度使うと手放せないです。ワンオペレーションでも使い易いかと思います。ピンマイクの特性は話し声に最適化されているため、歌声の収録には少し低域が物足りないかもしれません。
外部マイクを接続し使用するフィールドレコーダー。一眼カメラ等に最適なカメラネジ付きのレコーダーです。周囲の騒音が大きければ、指向性の狭いガンマイクをつないだり、静かな室内でリッチに音を録りたいならコンデンサーマイクを繋いだりできます。 マイクケーブルも自由に選べるため、距離が少し離れていても長いマイクケーブルを使えばダイレクトに収音可能。ワイヤレス受信機も接続可能。コンデンサーマイクにも対応しています。レコーダー単体では使用できません。マイクを繋ぐ手間は少しあります。ワンオペレーションですと、少し難易度が上がるかも。マイクをお持ちの方、あるいはマイクを拘って選び使用したい方にお勧め。
コンパクトながらXY方式のステレオマイクを搭載したハンディレコーダー。ステレオマイクなので、ざっくり広めに音を拾う用途に適しています。人の声を狙って録るというよりは、環境音も含めて自然に声を拾う用途や複数人に対して1本のマイクで収音をする必要性がある場面に適しています。1つポイントとなるのが、"1本のマイクで"という点です。声を収録する場合、ステレオマイクを複数立てるとミックス時に不自然になりがちです。複数マイクを使用する場合は、モノラルでDR-60DmkII等のマルチトラックレコーダーがお勧め。逆に1本のマイクで収録する場合は、LRで収録されるステレオマイクの方が耳で聴く感じに近く自然に聞こえると思います。
最も簡単に音声品質を向上させる方法です。ビデオカメラやDSLRに外部マイク入力端子が付いていれば、外付けマイクを直接カメラに接続
マイクの種類も自由に選ぶことができます。ガンマイク型、ステレオマイク、ワイヤレス型等…用途に合ったマイクを選び使用出来ます。カメラ内蔵のマイクは、省スペース・低故障といった構造上の制約がありますが、外付け型の場合は形状も出っ張ることが前提となっているため、指向性や音質を重視した設計が可能です。風切り音対策の防風ボアも取り付け可能な製品が多く、野外収録時の"ゴーゴー"という音声不良も起きにくくなります。
前述の音声別録りとは異なり、基本的にはビデオファイルに音声が記録するため、ファイル管理も楽です。
最大のデメリットは、音声不良が生じたときどうにもならないという点です。リハーサルでは大丈夫だったのに、本番でマイクの調子がおかしくなる…なんてこともあります。実に悔しい瞬間です。。。
音が入っていなかったり、ノイズが多かったりした場合…。ファイルが1つしかありませんので、どうにもできません。字幕や吹き替えで凌ぐか、撮り直すか、シーンまるごとカットということになりえます。時折、ユーチューバーの方も、「音が入っていなかったのでカット」というシーンを見かけます。慣れていても、予期せぬことで音が入らないということもあり得るのです。
一般で流通する多くのビデオカメラは音声モニター用のモニター端子を装備していないため、収録中に音を聞くということができません。
また、音声のレベル管理はカメラ側の設定で行うため、リアルタイムでの音量調整が難しい他、カメラによってはレベルが標準・標準プラス・高 といった3段階でしか設定ができないこともあります。
しかし、毎度毎度レコーダーを使って音声別録りは大変かと思います。
外付けマイクでの収録は、基本的に気軽にさっくりと、なおかつ内蔵マイクよりはしっかりと音を録りたいというニーズにお勧めです。
一眼カメラに最適なXYマイク。ハンドノイズを軽減させるサスペンション構造やフォーカス動作音を軽減させるノイズアイソレーションアームが特長的なビデオカメラ用マイクです。
ビデオカメラ用ワイヤレスシステム。音声出力を3.5mmステレオ身に端子とすることで、ビデオカメラのマイク入力端子に直接接続可能。モニター用のヘッドフォン端子も搭載しております。
ちなみに、iPhoneの場合はマイク入力端子が標準付属していないのですが、iPhone専用の外部マイクが売られており、lightning端子等に接続し使用することが出来ます。
基本的にメリット・デメリットは上記のマイク外付け型と同じです。iPhone専用マイクはiPhoneのみに使用出来ます。コンパクトな物が多く、持ち運びに便利です。しかしながら、製品によってはiPhoneでしか使用出来ないことがあります。マイク本体に直接lightning端子が付いている製品は、PC等に流用できないことがあります。
やや特殊なステレオマイク方式MS方式により、iPhoneを横持ちにしても適正なステレオ感が得られるマイクです。iPhoneに直接接続が可能で簡単に使用出来ます。
PAやレコーディング、ナレーション収録等に使用されるコンデンサーマイクやガンマイクをiPhoneに繋ぐこともできます。汎用性を重視される方はこのパターンがお勧めです。
コンデンサーマイクやガンマイクを使用する場合、多くの製品はiPhoneへの直接接続に対応致しておりません。別途iOS対応のオーディオインターフェイスを中継する必要があります。
iOS対応のオーディオインターフェイスを経由することで、お好みのマイクを接続することができます。オーディオインターフェイスとマイクの間はアナログのマイクケーブルで接続するため、ある程度ケーブルを引き伸ばすことも可能。iPhoneと音源が離れた位置にある場合にはS/Nの向上に有効な接続方法となります。
オーディオインターフェイスにダイレクトモニター機能が付いていれば、入力される音声をモニターすることができます。メリットは、マイクを他の機材にも流用しやすいという点、そしてオーディオとビデオがiPhone内で収録されるためファイル管理も楽な点です。
デメリットは、使用するアプリの制限を受けるという点です。撮影アプリによっては音声がモノラルになってしまったり、アプリとオーディオインターフェイスの相性によっては音がずれてしまうことがあります。音声不良が生じた場合、先述の外部マイク使用と同様に、差し替えが効かないというデメリットがございます。
インターネット配信で数多く使用されているYAMAHAのウェブキャスティングミキサーAG03。ミキサー型なので主に室内での収録で机の上に機材を置ける状態でのご利用にお勧めです。コンデンサーマイクも接続できるファンタム電源供給可能なミキサー。
私は普段、PanasonicのGX7mk2で撮影を行っていますが、残念なことに外部マイク端子が備わっておりません。当社のユーチューブチャンネルでは、(1)音声別録りを行うことが多いのですが、時間が許すようであれば、フィールドレコーダーを使用し収録を行うことがあります。
上記のセッティングで重要となるのが、TASCAMのDR-701Dです。DR-701DはHDMIオーディオへのエンベデッドが可能なため、上記のように一眼カメラのHDMI出力をDR-701Dに繋いでレコーダー内蔵モニター"VideoAssist"に入力することで、まるでオーディオミキサーのように音声を入力することができます。
さらに、VideoAssstはHDMIマルチオーディオに対応しているため、DR-701Dに入力したマイクの音声をマルチトラックでVideoAssistに記録が可能。さらにVideoAssist上で1つのビデオファイルとして収録されるため、同期の必要もありません。
2MIXではなく、入力ごとにマルチトラックで収録できるため、後からバランスを変えることも可能。一眼カメラ・DR-701D・VideoAssistの3点でレコーディングを行えば3重にもオーディオ収録が可能なため、ほぼ確実に収録ができます。
デメリットは機材間の接続が必要という点、そしてファイルが複数生成されるため、ストレージの容量を圧迫するという点です。
メリットは、同期の手間が無いという点、そしてDR-701Dでリミッターやディレイタイムの設定等細かなオーディオ設定が可能な点です。そしてVideoAssistで収録を行ったほうがGX7mk2内で圧縮した映像よりも圧縮率を低くすることができ、ノイズの少ない映像を記録できるという点があり、時間の許す限りはVideoAssistで収録を行うようにしています。
ビデオ収録のバックアップとしても人気のVideoAssit。一番のお勧めポイントはマルチチャンネルHDMIオーディオに対応しているという点。TASCAMのDR-701Dを前段に繋ぐことで、マルチチャンネルHDMIへのエンベデッドが可能。私もプライベートで欲しい機材の1つです。
ビデオ収録のバックアップとしても人気のVideoAssit。一番のお勧めポイントはマルチチャンネルHDMIオーディオに対応しているという点。TASCAMのDR-701Dを前段に繋ぐことで、マルチチャンネルHDMIへのエンベデッドが可能。私もプライベートで欲しい機材の1つです。
マイクを外付けで接続する場合は、ワイヤレスピンマイク、ガンマイク、ステレオマイクマイク、ブロードキャスティング向けのラージダイアフラムコンデンサーマイク等音源に合わせてマイクをセレクトする必要があります。
選ぶマイクによって、音質はもちろんですが、音の指向性が変わるので音の雰囲気も随分と変わってまいります。